特許

タイでの特許保護

Ananda Intellectual Propertyは、お客様の発明特許(国内での出願、PCT出願)、小特許、意匠特許についてタイ国内外での出願と中間処理をサポートします。

タイ国内での特許保護に関してよくあるご質問を以下にまとめています。タイで特許保護を求める場合の手続の流れは、発明特許についてはこちら、小特許についてはこちらをご覧ください。タイ特許法英語版はこちらからご覧いただけます。

タイをはじめとする新興工業国の投資家から、次の目的で新規の独自技術を保護したいと相談を受けるケースが多々あります。

  • 研究開発投資と知的財産の保護
  • 競争力の維持
  • 知的財産の商業化と投資費用の回収

特許権は、最終的に公開されることと引き換えにイノベーションを期限付きで保護することによってこれらの目的を叶えます。端的に言うと、特許とは後に公開され、公有に属することを条件に、国が発明者に対して期限付きで独占的に認めた一連の権利です。

要件

通常、特許出願には発明の説明および少なくとも発明を定義する請求項が含まれます。これらの請求は、発明特許の場合は新規性、創作性など該当する特許性要件を満たさなければなりません。特許の種類によって、それぞれに要件が定められています。

特許のメリット 特許所有者・出願人へのアドバイス [特許チェックリスト]
·       特許を取得した発明または意匠を競争なく生産、使用、販売、流通、商業化する独占的権利が特許権者に認められる。

·       認められた特許権を実施できる。特許権者は特許保護期間中、特許を取得した発明または意匠を他者が使用を禁止できる。

·       正しく商業化した場合に独占的収益源になる。

·       特許性のある対象物を特定し、評価し、適切な特許保護戦略を判断する。

·       特許出願前に開示が必要である場合、機密保持契約などの手段によって発明または意匠の秘匿性を適切に管理する。

·       タイの特許制度では「絶対的新規性」「先願主義」が採用されているため注意すること。新規の発明は特許出願日を取得するまで可能な限り秘匿すること。不適切な開示は、「絶対的新規性」を損なうリスクがある。

·       特許データベースで先行技術を確認し、競合他社の動きを注視する。

·       国内の特許代理人または弁理士と発明の特許性を確認する。

·       海外検索の結果報告書または類似する特許出願の特許査定のコピーを提出するとタイでの特許登録が早く進む。

 

特許は特許権者にその発明を使用、製造、販売する独占的権利を付与するものであることから、特許保護を得るための要件は他の知的財産権よりも厳しく定められており、特に発明特許は厳格です。タイの特許法では3種類の特許保護が定められています。

まずは、その発明が3種類のうちどの保護対象に該当するかを見極めましょう。タイで定められている3種類の特許は「発明特許」「小特許」「意匠特許(工業意匠)」です。発明特許は保護を受けるための要件が最も厳しく、その次が小特許、さらに意匠特許と続きます。

発明特許の場合、その発明に新規性、非自明性、産業上の利用可能性が備わっていることが条件となります。小特許と意匠特許の条件は新規性と産業上の利用可能性の2つです。非自明性は求められていません。

発明特許と小特許の違いは非自明性です。発明特許は非自明性が必須要件ですが、小特許に自明性は求められません。小特許と同様、意匠特許にも非自明性は求められません。工業意匠とも呼ばれる意匠特許は、その物体の形状、構造、模様などに関わる装飾的または外観的特徴を保護します。その点が小特許、発明特許と明確に異なります。

わかりやすい3種類の特許の違いは自明性です。発明特許は非自明性を求められ、その他2つは求められません。

下表に3種類の特許の違いをまとめています。

 

特許性要件

 

 

保護期間

更新不可

保護の範囲
特許の種類 新規性 産業上の利用可能性 進歩性:

非自明性

発明特許 必要 必要 必要 20年 新規性、産業上の利用可能性を備えた新規の製品またはプロセス。例:機械、工具、化学物質、バイオテクノロジーなどの分野における新規の方式または改良。
小特許 必要 必要 不要 10年 技術的進歩性を備えていれば発明特許に該当する可能性のある新しい発明。請求項数10個以内。
意匠特許 必要 必要 不要 10年 形状、構造、模様などに関わる特徴など、その物品の装飾的または外観的特徴。

 

特許保護の該当有無を確認したら、次は要件を満たしているかどうかを判断します。

新規性は、タイで保護される3種類の特許いずれについても求められる重要な要件です。特許法では、現時点の技術水準の一部を成す発明には新規性がないと定められています。例えば次の発明です。

  • 出願日よりも前に、タイ国内で他者に広く知られていたか、使用されていた発明
  • 出願日よりも前に、タイまたは外国でその主題が文書または印刷物(科学雑誌または論文など)に記載され、公開されていた発明
  • タイまたは外国で特許が付与された発明
  • 出願日の18カ月前にはすでに外国で特許が出願されていた発明
  • タイまたは外国で特許が出願され、その出願がタイ国内の出願日より前に公開された発明

発明の新規性を判断する場合、特許審査官はタイですでに保護が認められた発明だけでなく、国際特許データベースで新規性確認を行い、外国で付与された特許もチェックします。新規性を確認する目的で審査官が特許以外の文献検索(オンラインで確認できる刊行物、調査、情報など)を行うケースも増えています。
タイ法に基づく保護を求めるのであれば、適切な機密保持契約を結ぶ場合を除き、特許所有者は出願日以前にその特許の非公開を徹底することが大切です。出願日よりも前に「現時点での技術水準」に該当する開示や露出があった場合は、出願人の特許権が損なわれるおそれがあります。

産業上の利用可能性要件は3種類の特許のいずれにおいても満たす必要があります。新規性要件とは違い、産業上の利用可能性要件は比較的簡単に満たすことができます。タイの特許審査官は産業上の利用可能性を幅広く解釈するため、何らかの商業的状況における使用で通常は事足ります。手工芸品、農業、商業を含め、いずれかの産業で生産または使用されていれば産業上の利用可能性があるとみなされます。ただし、産業には影響がなく学術的または理論的応用性のみある発明はこの要件に照らして十分とはみなされません。

非自明性・進歩性は、最も実益のあり得る特許のタイプ1つにのみ求められます。発明特許です。多くの場合、進歩性要件を満たしているかどうかの判断は難しく、主観的になりがちです。タイの特許法では単に、「当業者にとって自明ではない」場合は進歩性を備えた発明であると解釈すると述べられています。
特許・小特許出願審査マニュアルにはさらに具体的に、発明は次のうち少なくとも1つに由来する優位性または改良を備えていなければならないと明記されています。

  1. デザインまたは形状の効果
  2. 作業
  3. 選択
  4. 問題および解決策の要件
  5. 労力
  6. 非単純化
  7. 開発手順の集約
  8. 経済的成功
  9. 科学的技術調査
  10. 進化
  11. 発明による成果
  12. 非交換性化合物
  13. 驚きの結果

マニュアルにはさらに、タイの特許審査官はその他の法域における類似出願に関して発行された検索レポートを確認するとあります。多くの場合、タイで出願される発明特許は通常、米国、欧州、日本、中国をはじめとする他国で先に出願されています。タイの特許審査官は海外検索の結果報告書や海外での類似特許出願の特許査定を参考にタイでの特許出願の進歩性要件を判断することが多くあります。なお、他の法域で認められた同様の特許が存在するからといって、新規性要件を無効にする開示とみなされるわけではありません。

次の発明は、タイでの特許保護の対象になりませんので注意してください。

  • 自然に存在する微生物あるいは、動植物から採取した物質
  • 科学または数学上のルールまたは理論
  • コンピュータープログラム(著作権に基づく保護の対象)
  • ヒトまたは動物の病気治療に用いられる診断、治療、医療プロセス
  • 社会秩序、道徳規範、公序良俗、福祉に反する発明

タイで発明特許を出願するには2つの制度があります。

  • 国内出願(タイで先に出願する、または他国で優先出願を行ってから12カ月以内にタイで出願する)
  • 特許協力条約(PCT: Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願。次に対して特許保護を求めることができます。
  1. タイ知的財産局または世界知的所有権機関(WIPO)に「国際特許出願」として出願されたタイおよびその他指定PCT加盟国の発明
  2. 他のPCT加盟国または世界知的所有権機関(WIPO)に「国際特許出願」として出願された発明についてタイでの保護を求める場合(PCT出願の国内段階移行)

国内と国際、いずれの制度で出願する場合も、まずは当業者がその発明を理解し、作ることができるような詳しい明細書本文を盛り込むことが大切です。明細書にはその発明の最良の実施形態を記載しなければなりません。こうした明細書は他国では求められない場合もあります。

さらに明細書(該当に応じて)とクレームを裏付ける要約、名称、図面を加えます。

クレームは、その発明に対する特許権所有者の独占的権利を明確に特定できるよう簡潔明瞭ではなければなりません。

これらの情報はすべてタイ語で用意し、知的財産局に提出することになりますので注意してください。つまり、外国語での出願をタイ語に翻訳する際は質が極めて重要です。下図に、タイで発明特許を国内出願する際の大まかな手順をまとめています。

発明特許登録手順(国内出願−概略)

タイでの発明特許出願の審査期間は出願人にとって大きなハードルの一つです。発明特許出願の審査期間は、対応する外国出願がない場合は特に、最長10年かかることもしばしばあります。この遅れの主な理由はタイにおける審査待ち出願件数のバッグログによるものです。遅いことを理由にタイでの出願を躊躇する必要はありません。特許審査を取り巻く環境を認識し、正しい準備と制度対応を行うことによって手続きを大幅に改善できる可能性があるからです。特許を直接的に守るための唯一の手段が特許法に基づく登録ですから、手続きそのものを回避するのではなく、できる限り準備を整えることが賢明です。

こうした審査期間の長さは発明特許にのみ該当します。これに比べると、小特許および意匠特許の審査はかなり短期間で完了します。

小特許(他国では実用新案権とも呼ばれることもある)は、発明特許に代わるもう一つの有用な手段です。新規性、産業上の利用可能性はあるけれども、非自明性・進歩性を備えていない発明を保護します。要件が比較的緩やかであることから、小特許の権利期間は発明特許の20年よりも短く、10年間のみです。

タイでは、10年を超える保護を必要としない企業を中心に、小特許がよく用いられます。
特許審査官が方式審査のみを行うため、通常、出願日から1年半以内で発行されます。審査請求は必要ありません。

下図に、タイで小特許を国内出願する際の大まかな手順をまとめています。

小特許登録手順(概略)

タイでは国内、国外いずれの出願人にも、意匠特許がよく用いられています。意匠特許の目的は、形状、構造、模様などに関わる特徴など、その物品の装飾的または外観的特徴を保護することです。

タイの特許法では、1つの意匠ごとに1つの意匠特許出願を行います。従って、模様配置のバリエーションなど、1つの意匠に対して複数の実施形態の保護を求める知財所有者は、それぞれの形態について個別の出願を行う必要があります。

出願時には二次元と三次元について複数の角度からの意匠の描写を提出します。前面図、背面図、右側面図、左側面図、底面図、上面図、斜視図などです。

これらの図は物品の図面でも写真でもかまいません。

携帯電話用ケースに応用されたクロックスシューズデザインと実際の商品

下図に、タイで意匠特許を国内出願する際の大まかな手順をまとめています。

意匠特許登録手順(概略)